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癒されたい味のりのブログ

あなたに【笑える一時】と【真面目に考える時間】を提供します 。

初めて小説を書いてみたよ

コラム

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 昨日、我らがヒトデ氏のブログを読んだ。
www.hitode-festival.com
 いつもブログが面白いのに、まさか小説の才能まであるとは・・・ヒトデ氏恐るべし。その記事を読んで自分も書いてみようかなーと思い、今回初小説を試みる事にした。内容どうしようかなーと思ったんだけど、そういえばヒトデ氏が前に小説を書いて投稿するブログがある事を教えてくれた事を思いだし、せっかくなのでエントリーすることにした。 novelcluster.hatenablog.jp
というわけで、初参加させて頂きます。今ちょうど見に行ったら、テーマは「月」という事なので、「月」をテーマに書いてみようと思います。三人称が推奨らしいけど、難しいので主人公目線で書きたいと思います。星の王子さま風に仕上げてみました。ではどうぞ

タイトル:月夜の公園

 人は幼い頃に夢を描く。将来なりたいと強く願う夢だ。僕の場合は画家だった。朝から晩まで飽きること無くずっと絵を描いていて、将来は画家になれると信じて疑わなかった。自分で言うのも何だが、自分の絵は誰よりも上手だと思っていたし、絵の才能もあると思っていた。
 しかし、それを周りの大人たちが許さなかった。絵を描いていると決まって「遊んでないで勉強しなさい」と僕を叱りつけたのだ。大人たちは英語や歴史などの勉強をすると褒めるし、勉強に関する質問をすると喜んで答えてくれるのに、絵の話になった途端、何の興味も示さなくなり、話をしてくれなかった。次第に心が挫けていき、僕は画家になるという夢を諦めた。
 僕は大学を卒業した後、弁護士になった。別に弁護士にどうしてもなりたかったという訳ではなかったが、医者や弁護士になれば大人たちがバカみたいに喜ぶのでなった、というだけの話だ。
 仕事からの帰り道、不意に公園が目に入った。そこは、僕が小学生のときに友達と毎日のように遊んだ公園で、僕は懐かしい気持ちになって公園に立ち寄った。
 昔は大きく感じていた鉄棒もブランコもすごく小さく感じた。ブランコに座って夜の風にあたると、夜の風はとても涼しく気持ちが良かった。ふと夜空を見上げると星たちが光り輝いており、特に満月が綺麗だった。こんなにも綺麗な満月を見るのは何年ぶりだろうと、僕はしばらくその夜空を眺めていた。
 すると不意に声が聞こえてきた。

「おじさん、何をしているの?」

 それは、ともてかわいらしい声だった。
 僕はその声の主に顔を向けると、そこにいたのは一人の少年だった。見たところ、八、九歳といったところだろうか。どうしてこんな子供がここに?もう夜も遅い。当然、普通の子供なら家に居る時間帯だ。

「おじさん、何をしているの?」

 少年は先程した質問を再びして来た。

「あ、ああ、ちょっとね。昔のことを思い出していたんだよ」

少年はとても不思議そうな顔をして僕に尋ねた。

「どうして昔のことを思い出していたの?」
「ここは昔、僕がよく遊んでいた公園なんだ。だから、懐かしくなってしまってね」
「懐かしい?」

 少年は訳が分からないというような表情をしていた。

「君にはまだ分からないかもね。大人になったらきっと分かるよ」
「大人になったら分かるの?」
「ああ、大人になったら分かる。そういうものだよ」

 僕は大人になれば分かるという言葉が嫌いだった。僕が幼い頃、大人たちにどうして画家を目指してはいけないのか、なぜ勉強をしなければならないのかを尋ねると、大人たちは皆、「大人になったら分かる」としか言わなかった。だから僕は、この「大人になれば分かる」という言葉が嫌いだった。そんな僕がこの言葉を自ら使っている。僕が大人になったからか、それとも、子供の心を何処かに忘れてきてしまったからか。
 そんな事を考えながら僕は少年に尋ねた。

「君は何処から来たのかい?親御さんが心配しているんじゃないかな」

 この子が親と夜にこの公園に遊びに来たとは考えにくい。もし一人で家を抜け出してここへ来たのなら親御さんも心配しているだろうし、家まで送ってあげよう。最近は物騒だし、この子に何かあったら目覚めが悪いしな。
 すると、少年が僕の顔を見てこう言った。

「お月さまから来たんだよ」と。

 おつきさま?夜空に輝いているお月さま?そんなことがあるわけが無い。そうだ、子供はいろいろな言葉を違う言葉で置き換えて言う事がある。きっと、どこかの場所をお月さまと言っているのだろう。そう思い、少年に尋ねた。

「お月さまって何処にあるの?」
「何言ってるのさ、おじさん。お月さまならすぐそこにあるじゃない」

 少年はそう言いながら夜空に輝く月に人差し指を向けた。

「でもね、もうすぐ帰らなきゃいけないんだ。残念だけどね」
「帰るって月に?」
「うん」

 僕は少年が子供特有の妄想を抱いているのだと思い、それ以上は何も言わない事にした。僕だって幼い頃は良くヒーローごっこだったり、お医者さんごっこをしたものだ。この子にとってそういう設定というか、妄想というか、そういうものなんだろう。
 しばらくして少年は視線を月から僕に戻し、僕にこう言った。

「ねぇ、おじさん。絵を描いてよ」

 なぜ急にそんな事を言ったのかはわからないが、もう何年も絵を描いていないし、描きたいとも思わなかったので少年には申し訳ないが断わる事にした。

「ごめんね。僕は絵が描けないんだ」
「おじさんの絵を見たいんだ。いいでしょ?おじさん、絵を描いてよ」

 なぜ、この少年が会ったばかりの僕の絵を見たがるのか分からなかった。僕は絵は描けないと断わろうとしたが、少年がどうしても描いて欲しいと頼むので、僕は遂に少年の熱意に負け、絵を描くことを承諾した。

「でも、今は絵は描けない。ペンぐらいしか持っていないからね。だから、家で絵を描いてくるよ。そしてそれを君にあげる。それでいいかい?」
「うん。分かった。じゃあ、明日の夜、今日と同じ時間に持ってきて。約束だよ」
「分かった。もう夜も遅いし、そろそろ帰ったほうがいい。きっとお父さんとお母さんが心配している。おじさんが家まで送ってあげるよ」

 その時、カランと言う音が聞こえた。下に目を向けると、なにやら光っているものがあった。おそらく少年が落としたのだろうと思い、僕はそれを拾って少年に渡そうとした。

「ねぇ、これ君の・・・」

 不思議なことに、顔をあげたとき少年の姿はどこにも無かった。僕は驚いて回りを見渡したが、やはり少年は見当たらなかった。しばらくの間、少年を探したが結局見つからず、僕は諦めて家へと帰った。
 家に帰ると、少年との約束を果たすため、絵を描こうとキャンパスの前に座った。馬鹿げた話しだが、僕は家に帰ってくる途中で少年との約束を果たすためだけに絵を描く道具一式全てを買ってきたのだ。
 何を描くか少し迷ったが、僕は少年と出会ったあの夜の公園を描くことにした。今日は早く寝ようと思っていたのに、結局、僕は夜遅くまで絵を描いていた。不思議な少年だったな、本当に月から来たのかも、などと考えながら。
 翌日の夜、僕は公園にいた。もちろん、少年との約束を守るためだ。ずいぶんと久しぶりに絵を描いたものだからうまく描けず、なんどもなんども描き直したが、今の自分の持てる限りの力を出し尽くしたつもりだ。
 今日も昨日と同じように夜空に星と月が輝いている。本当に少年はあの月に住んでいるのだろうか。もし本当なら他の星にもあの少年のように人が住んでいて、地球とはまた違った世界が無数にあるのかも知れない。もしそうなら僕も一度でいいから行ってみたいものだ。地球とどのように異なる風景があるのか、どんな文明が発展しているのか、子供の頃夢見ていたわくわくを今更ながらに感じている。そんな自分に自分自身が一番驚いていた。とうの昔にそんなものは捨てたはずなのに・・・。
 そんな事を考えているうちに、少年が公園に姿を現した。

「こんばんは、おじさん。絵を描いて来てくれた?」
「ああ、描いて来たよ。ずいぶんと久しぶりに描いたものだから中々上手に描けなくてね。でも、今の僕なりに精一杯描いたつもりだよ」
 僕は少年に自分の描いた絵を渡した。
「わー!すごい!とても素敵な絵だね。ありがとう、おじさん。僕の思った通りだよ」

 少年は僕の描いた絵を何度も何度も褒めてくれた。ここまで喜んで貰えると描いたかいがあるというものだ。僕は少年にその絵をプレゼントすることにした。そもそもあげるつもりで持ってきたものだが。
 すると少年は申し訳なさそうな顔をしながら答えた。

「ありがとう、おじさん。とても嬉しいんだけど、月にはここの星の物は持って来てはいけないって言われているんだ。残念だけど、この絵を見るだけで我慢するよ」

 僕はそうなのかと少し残念に思いながら、ふと昨日少年が落としたものを思い出し、少年に返そうとポケットから取り出した。

「これ、君のじゃないか?昨日落とさなかったかい?」
「ありがとう。でもそれはおじさんにあげるよ。絵を描いてくれたお礼。月に他の星のものを持ってきたらダメって言われたけど、他の星で無くしものをしちゃダメとは言われてないからね。月に帰る前におじさんの絵を見ることが出来てよかったよ。本当にありがとう。ねぇ、おじさん。今本当にやりたいことって何?目を閉じて考えてみて」

 そう言われ、僕は素直に目を閉じていろいろなことを考えた。

「自分の心に素直にならなきゃ。おじさんならきっと大丈夫。ばいばい、おじさん」

 目を開けると、もうそこには少年の姿は無かった。

「月に帰ってしまったのかい、少年。本当に短い時間だったけど、僕は大切な何かを思い出せた気がする。こちらこそありがとう」

 僕は夜空にそう呟いて公園を後にした。長年、絵に対する情熱が消えていたが、また描き始めようと思う。今度はどんな絵を描こうか。
 家に帰ると、僕は少年の為に描いた絵を部屋に飾った。これは一生の宝物にしよう。これを観るたびにあの少年を思い出す事だろう。絵のタイトルはどうしようか。そうだな、こんなのはどうだろう。



「月夜の公園」



おしまい